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001 旧海軍駆逐艦 夕雲型の全長寸法について
結論を先に言うと、各種文献で公表されている全長 119.03m (本によっては 119m )は
間違いで、正しくは、119.30m である。 全ての文献の値を否定することは、冒険かも知
れないが、一人が間違え、それを誰もがウケウリしたとすれば、そうとは限らない。

119.30 を 119.03 と 読み違えるか、書き違う事は、誰でもよくやるケアレスミスで、愛
すべきものである。 誰が最初に間違えたかと言う事よりも、世の中に多いウケウリの
姿勢の方が、問題と思う。 この世界、自分でよく事実を確認してから、ウケウリしよう。
但し、そこからは新しいものはなにも生まれず、文化の停滞を招くだけであるが・・。

以下に 「119.30 m 論」を述べる。

 きっかけは、夕雲の作図中に不都合が発生した事による。 全長を119.00mとして作図
をすると、 艦首の側面形状が、秋月、夕張の如く立ち上がり、写真のそれとはかけ離れて
しまったのだ。 (添付図において ? を付けた形)
 
 すなわち
(A) 全長(LOA) 119.00m-水線長(LWL)117.00m =艦首長2.00m とした事だ。 

(B) 別の方法で全長を求めると、水線長(LWL) 117.000 + 艦首長(xx) 2.300 =119.300mm と
   なる。
 
ここで、(xx)は、陽炎の公式の線図に記載された値を採用してみた。 何故なら

ウケウリではあるが、本艦の船体は、陽炎型のそれを、艦尾延長500mm、船底をフラット
にしただけで、基本的には、同一である・・・・・・とされている。 確かに LBP 垂線間長は
同一だし・・・・従って艦首長も同じ・・・・

たかだか300mmの、つまらない話かもしれないが、実際に1/125で作図してみると、かなり
艦首形状に効いてくるのである。 約10% 艦首長をつめる事になるからだ。

ここでハッキリしている事は、
 艦首長は、今、自分が公式図を見て確認した(但し陽炎型の線図ではあるが)
 水線長、全長は一般図書の値である。

 かくして、水線長、全長のどちらが正しいのか分からず、作図は頓挫、一週間ほど放置
 してしまった。

 ある日、とんでもない所に、真実が潜んでいるのを発見、あっけなく解決をみた。
 それは、公式図 沖波中央部構造切断図 の図中に、フリ-ハンドで全長119300 と船殻
 構造設計者が、記入しているでわないか !!  

 結論として
 全長は 119.300mが正しい。 この値で作図すると、艦首形状は、写真イメ-ジとマッチする
 艦首長は陽炎型と同一の値となり、踏襲したとの風説と一致する。
 艦尾延長は 陽炎型に対し、 プラス800mm丁度である。(従来の説は500mmとなってる)

 又、夕雲型の船体船図によると、
 艦尾形状のフラット化は、陽炎型よりも更に3m 位い長く、蛇軸附近まで達している。
   ナックルライン(エッジライン)は、推力のロスを防ぐためと思われる。 これは「チャイ
   ン(chine)の効果」と呼ばれるものの、応用ではないかと察する。 根拠として、

   昔、東京湾にボ-イング727が墜落したが、その事故調査に関する研究をした本が
、  あった。 著者が名和教授という以外忘れたものであるが、その本に「チャイン効果」
   という流体現象に関する記述が有った。 それによると、

   コップを横にして、水道の水をかけると、真下に流れず、曲面に沿って直角にほとば
   しるという。 丸い表面が水流や気流を吸いつけるのを吸引効果という。 水上機の
   フロ-トの喫水部は、Rをつけず鋭い角(chine)をつけて、水の吸い上げをたちきると
   いう。・・・・・と書いてあった。 艦尾波の大小にからむお話と思われる。

   ヘタがボ-トを漕ぐと、使った力は水を空中にかき上げるばかりで、船足は遅い。
   大きな艦尾波は確かに勇壮で美しいが、低い造艦技術を眺めて悦に入ることには
   ならないのだろうか・・・・・

 艦尾の傾斜角が増大している。 また艦尾キ-ルラインは、よりなだらかになっている。
   艦尾底面の流れをよくし、チェイン効果を増すため、90度より鋭角とした、より高速化
   のためのリファインか、それとも延長重量の代償重量対策か・・・・?

 プロペラ径が若干増大している。 (100mm増)

 いずれにしても、陽炎型から始まった艦尾底面の逆への字フラット化を更にモディフアイ
 し、プロペラ径を増し、艦尾延長 800mm として、高速化をねらったと推測する。 かなり
 規模の大きい変更で、艦隊型の決定版を目指したものか・・・・。

 蛇足ではあるが、ある記述によると、艦尾にチェインをつけた最初の駆逐艦は、朝潮型
 とあるが、公式図を見る限り、まだ R がついており、注意する必要がある。 何故なら
 このRは喫水線より上から始まっており、WLモデルにおいても、差別して表現すれば、
 自己満足のたしとなるからである。  

 以上長々と述べた、「119.30論」をここで閉めたい。 下に掲げた図は、夕雲型の図面を
 ひく際、リサ-チ用に公式図からおこしたものである。 補足すると、FPから11.5mまでは、
 直線で、スロ-プで水はけがよいためか、キャンバ-なしである。

 もし、拙論に間違い、疑問が有りま したらメ-ルを送って下さい。 検討のうえ、図面の
 見直しをかけます。 もし本論が正しいとすれば、歴史教科書ではないが、全ての資料
 をカキアラタメル必要があると思う・・・ ・しかし大和、大鳳ほどメジャ-ではないから、無
 視されるに違いない。 やはりこの拙論のすみかは、スクラッププックがふさわしいのか。
  

夕雲型、陽炎型 船体線図
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Body Plans  I.J.N  Destroyer Yugumo class & Kagero class
Drawn by Miyukikai
Shown as both profiles on center line with mm unit
戦艦陸奥の解剖所見
青葉、最上後部ヤ-ドの上反角
BB Haruna  View Y turret in 1939